23日に急逝した歌手のエイミー・ワインハウスについて、今からちょうど3年前になるが、彼女が『007クォンタム・オブ・ソラス/慰めの報酬』のテーマ曲を担当し損ね、大変悔しがっていたという話をお伝えしていた。エイミーはリベンジ宣言の通り、その後密かに007向けと思われる曲を作っていたようだ。
『007/慰めの報酬』のテーマ曲については、確かに当初はエイミーにオファーが来ていたのだが、彼女の自堕落な生活と怠惰な仕事ぶりに関係者が愛想を尽かし、結局ジャック・ホワイト&アリシア・キーズのデュエットに決定していた。
イギリス人として、またアーティストとして “007” に曲を提供するというのは誇らしいこと。エイミーは自分が干されたことをひどく悔しがり、イギリスの芸能誌に「007のプレミア上映会と同じ日に、私がそのために作った歌をリリースして勝負してやる!」と語り、鼻息を荒くしていた。
そんなエイミーとプロジェクトを共に進めて来たのが、音楽プロデューサーでシンガーソングライターのマーク・ロンソン(35)。彼は26日に営まれたエイミーの葬儀にも駆けつけており、翌日にロンドン南東部グリニッジにある “Old Royal Naval College” で開催されたコンサートのステージで、エイミーとのコラボである “Valerie” を演奏した。
誰にも愛されたこの曲、観客も始めから終わりまで全員で熱唱し、そこには作曲者であるデイブ・マッケイブの姿もあった。会場が感動と興奮に包まれる中、ロンソンは「エイミーは特別な才能を持った女性、永遠に僕の妹のような存在だよ。僕もいつまでも暗い気持ちのままじゃいけないと思っている」と、彼女と共にプロジェクトを進めてきた責任者の顔になった。
彼はまた、グラミー受賞歌手でありながら依存症に陥り、音楽活動がおぼつかなくなったエイミーの一連のお騒がせ人生について、葬儀の後で「ご両親は懸命にエイミーに心を寄せていたんだけれど、エイミーはどんどん自分自身を崩壊させて行ったんだ。誰の罪でもないよ」と語り、しかしエイミーが素晴らしい曲をレコーディングして残していることを明らかにした。
ここ1年のプロジェクトにより生まれた “The Walther Project”、“Revenge Alone”、“You’re The Man” という3つの曲について、ロンソンは自身のスタジオ(オックスフォードのヘンリー・オン・テムズに所有)で共に過ごした時のことを、こう話している。
「結構はかどったよ。アウトラインはドラムとギター、ボーカルにはそんなに力を入れていなかったんだけれど、これらを完成させるのにそう手間はかからないと思う。」
007に曲を提供したいという執念をエイミーも、そしてプロデューサーのロンソンも捨てていなかったそうだ。「せっかくのチャンスだったのにモノに出来なかったと知った時は、はらわたが煮えくり返るほどの悔しさ、苛立ちを覚えたね」と話している。
しかしエイミーの広報担当者クリス・グッドマン氏は、「彼女はたくさんのものを残していますが、まだそれらのリリースをあれこれと検討する段階には至っていません」と慎重な姿勢を見せている。
ただし現在のジェームズ・ボンド俳優であるダニエル・クレイグ(43)は、「エイミーは驚くような声の持ち主だよね。(映画作品に)美しいものを添えてくれる気がするよ」と称賛しており、これはかなりポイントが高い。「没後に」ではあるが、エイミーの長年の悲願が叶うことを祈らずにはいられない。
(TechinsightJapan編集部 Joy横手)