ウィスコンシン州の米共和党保守派団体が、州議会選挙の民主党候補の政治スタンスを攻撃するTVCMを作成し放映したが、このナレーションの声が名優モーガン・フリーマンの声に非常に似ていると話題になった。とうのフリーマンは「あれは私の声ではない。」と反論。攻撃された側の民主党議員も「フリーマンの声を使って人々にCMの内容を信じさせようとする、悪意あるものだ。」とCMの放映を取りやめるよう要求している。
05年のドキュメンタリー『皇帝ペンギン』で聴かせた、低音の響きが心地いい癒されるナレーション。そのフリーマンに似た声のナレーションを、保守派政治団体が敵の政治家を攻撃するために使ったとしたら、さすがのフリーマンもいい気はしないだろう。
このCMはウィスコンシン州の共和党系圧力団体「Citizens for a Strong America」が、州議会上院議員選挙の民主党候補者、シェリー・ムーア氏を攻撃する目的で作成し、地元TV局で放映しているもの。
CMでは、モノクロ画面にムーア候補やドル紙幣のコラージュが現れ、ナレーションがこう語る。「シェリー・ムーア候補が、税制改革をくつがえそうとやっきになってきたせいで、過去10年で財産税が2倍になってしまいました。それに彼女がオバマ大統領主導の政府の健康保険改革を支持したせいで、ウィスコンシン州の労働者は、月510ドル余計に税金を払うはめに。そのお金で、不法移民が無料でヘルスケアを受けているのです。」
CMはムーア候補が州上院議員に選出されたら、州民が税金まみれになると訴えるもので、無言のうちに対抗馬の現職共和党議員、シーラ・ハウスドルフ候補を支持するよう呼びかけているもの。
広告はインターネット新聞の『ハフィントン・ポスト』に最初に取り上げられ、「モーガン・フリーマンがウィスコンシン州の地方政治に興味があるとは驚いた。」と書かれたため、フリーマンの代理人はこのような声明文を出し、関わりを否定した。「ウィスコンシンでモーガンの声に良く似たナレーターを使ったCMが放映されているようですが、これは本人の声ではありません。」「CMの声は、モーガンに似せようとしてナレーションをしているようですが、似てはいるものの、あと一歩足りません。」
ムーア候補自身も「フリーマンの声を使って、ウソばかりのCMをもっともらしく見せようとする試みは、有権者を欺くものだ。」とCMの作成団体を非難。ムーア候補の所属するウィスコンシン州民主党も、4つの地元TV局にこのCMを流さないよう要求する騒ぎとなった。
フリーマン似の声が共和党保守派のCMに使われたのは、実はこれが初めてではなく、昨年ノースカロライナ州から米国議会下院議員に立候補したB.J.ローソン候補も同じような「フリーマン風」のナレーションをCMに使用。後にフリーマンに謝罪している。
フリーマン自身は08年の大統領選挙の際、民主党オバマ大統領支持を公言していた、アンチ保守派のはず。もし頼まれたとしても、保守派の主張に加担することは決してないはずなので、きっと本人も困惑していることだろう。しかし、きっと罪作りなのはあの魅惑の低音ボイス。あの声でナレーションされたら、言われたことを何もかも信じてしまうという人は、保守派ならずとも多いはずだ。
どれだけフリーマンの声に似ているか、実際のCMはコチラで見られる。
(TechinsightJapan編集部 ブローン菜美)