セカチューでブレイクし、ヒロインの代名詞でもあった長澤まさみ。最近ではあまりヒット作に恵まれず迷走気味だったように感じる彼女が久しぶりにドラマ主演した。3月21日に放送された阿川佐和子原作の「屋上のあるアパート」(TBS系)だ。
27年間行き当たりばったりで生きてきた桂木麻子(長澤まさみ)。2年のフリーターを経て、父親のつてで就職した小さな編集プロダクションが倒産し、心機一転人生初の一人暮らしを始める。しかし新生活開始早々ロンドンに嫁いだ幼なじみ(芦名星)が転がり込む。再就職も前の会社の社長・岡村実(近藤芳正)の紹介で工藤俊太郎(吉田栄作)の会社を紹介してもらうが、それも「仕事はないよりまし」で決めてしまう。両親からお見合いを勧められるも断れず、しぶしぶ顔を出すも相手(加藤晴彦)に「好きな人がいるので、そっちから断ってくれ」と頼まれる始末。
決してどん底なわけではいが、決して良くもない。でもなんか自分だけはずれを引いているような気がする。そんな誰しもが一度は感じる「特別」なことのない日常がゆったりと描かれていた。まるでもたいまさこや小林聡美が出てきてもおかしくはない雰囲気だ。そんなどこかさえない女性・麻子を長澤まさみが意外にも好演していたから驚いた。
麻子は今まで男性受けするヒロインが多かった長澤の役とは正反対である。ヒロインらしいところはほとんどない。お見合い相手と工藤の二人に好意を持たれるが、ドラマチックな展開はない。常に心の声は文句を言ったりツッコミを入れたりと愚痴っぽく、笑ったり、泣いたり、怒ったり、ふてくされたりとその小さな喜怒哀楽のきっかけは本当にささいなことばかりだ。そんな麻子の日常を演じる長澤の様子は映画「タッチ」で浅倉南を演じていた時よりも、すごく魅力的で好感が持てた。本当に飛び抜けた魅力がない。でもそれが見ている側を安心させた。
ドラマのような特別な世界でなく、なんでもないありふれたささいな日常を魅力的に演じられる女優は長澤の同世代には少ない。いっそのこと、もたいまさこや小林聡美の後継者を目指すつもりで、普通の女子を極めた方が長澤には向いているかもしれない。
それにしても長澤まさみが27歳のアラサーを演じるとは。彼女がそんな年齢になったことに一番驚いたかもしれない。
(TechinsightJapan編集部 洋梨りんご)