writer : testjournalist

【ドラマの女王】まんまとはめられた。これぞAKB入門ドラマ「桜からの手紙」。

2月26日~3月6日まで9夜連続で放送されたAKB48出演の「桜からの手紙 ~AKB48 それぞれの卒業物語~」(日テレ系)は先日ミリオンを達成した彼女たちの新曲「桜の木になろう」をモチーフに制作されたドラマだ。

女子高を舞台に咲かない桜の木の世話しかしない担任・前田幸次(上川隆也)が、自分が余命3か月であることを生徒たちに告白するところから始まる。前田は生徒たちに卒業証書と称して手紙を渡す。それぞれにたった一言書いてある手紙を見て、生徒たちはとまどいながらも助けられていく。
ドラマはオムニバス方式で大島優子、小嶋陽菜、高橋みなみ、板野友美、渡辺麻友、柏木由紀、そして担任前田の娘役の前田敦子の7つのエピソードを中心に進む。それぞれ「受験と部活」「妊娠」「家族」「性体験」「友情」「リストカット」「親子の絆」をテーマにしたありがちなものではあったが、しっかりした内容で悪くなかった。
この前田敦子を除く6人のエピソードとキャラクターは、それぞれのイメージに合っていて違和感なく見ることが出来た。「クラスにこんな子いたなぁ」と思い出してしまうほど当てはまっていた。ただ自分の居場所が見つけられず、いつも一人で「リスカ」に走ってしまう柏木の配役は意外だった。こういった大人数、しかも学園ものドラマでアイドルとミスマッチな役が出てしまうことは仕方のないことだが、彼女の「柏木」役はかなりはまっていたので驚いた。彼女が参加しているユニット「フレンチ・キス」の新曲PRなどで見られる笑顔を振りまく姿よりも、一人陰のある「柏木」の方がずっと魅力的だった。

ドラマは一人のエピソードを1回10分、複数回に分けて放送。1日30分で3人分の日もあれば一人分(10分)の日もあるなどバラつきがあり、こまぎれな放送だった。そこまでして9夜連続放送する必要はあったのかと思ったが、ドラマ出演の少ない彼女たちの演技力を考えれば、一人当たりの時間を長く費やすよりも、ころころと場面が変わる一人10分という数字はちょうど良かったのかもしれない。これが3時間のSPドラマだったらと思うと最後まで飽きずに見ていられた自信はない。

AKBのメンバーは役名もそのままという設定だった。確かに全員の顔と名前が一致していない人からすれば、役名と本人の名前の両方把握することは大変である。そのためか毎日初出の際に名前のテロップが入ったり、挿入歌はAKBのあまり知られていない曲を使用するなどまさにAKB入門ドラマであった。事実、この9日間でだいぶ顔と名前が一致するメンバーが増えたのだから、まんまと戦略にはまってしまったと言えよう。さすが秋元康である。

ただ一つだけ言わせてもらうと8日分の総集編と担任・前田と娘・敦子の行方を追った最終回1時間SPで、それまでほとんど出てこなかったAKBのエース前田敦子が、最後の最後に全てをかっさらっていった印象で終わってしまったことだけが少し残念だった。
(TechinsightJapan編集部 洋梨りんご)