(ジャンル:ジャズ)
ジャズの世界では、名盤といってもいろいろある。
ジャズ道(?)を歩む者は必ず聴かなければならない「歴史的名盤」や、コレクター道を歩むものなら、持っていないと恥ずかしい「隠れた名盤」などがある。
しかし、そういったものを実際にジャズファンが日常的に聴くかどうかは非常に怪しい。本当によく聴かれるのは特に偉大でも歴史的でもないけれども、皆から愛される「愛され名盤」であろう。
今回紹介するのは、その代表とも言うべき愛され名盤、ジェリー・マリガンの「ナイト・ライツ」である。
なんのひねりもないタイトルに、上手なのか下手なのかよくわからないジャケットデザインだが、50年近く前の作品であるにもかかわらず、現在でも立派に通用するムーディなジャズである。
どの曲も、過剰な表現を控え、落ち着いたオトナのジャズを演奏しているのだが、人気の高いジャズ名盤に共通する事象として、アレンジが非常に優れているのだ。
アレンジの妙は、2曲目の「カーニヴァルの朝」と、4曲目の「プレリュード:ホ短調」が際立っている。
ともにボサノヴァアレンジであるが、「カーニヴァルの朝」は60年代初頭に多くの人が演奏した有名なボサノヴァ曲であり、「プレリュード:ホ短調」はショパンのピアノ曲である。
この2曲が、同一のムードで統一されていることは、素晴らしいの一言に尽きる。
夜にちょっとくつろぎたいときや、恋人とのムード作りなど、このアルバムはいろいろと活躍してきたが、初心者向けの名盤としてもオススメできる内容だ。
ジャズでは、古くから「即興神話」というものがあって、無尽蔵のアドリブソロの応酬があれば素晴らしいものができると思われているが、実はそうでもない。
ジャズ名盤の多くは、優秀なプロデューサー、優秀なアレンジャーそしてツボにはまった演奏者ラインナップの3つが揃えばおおむね素晴らしいものができあがる。
本作も、そうした名盤のひとつとして、長く聴かれていくであろう。
(収録曲)
1. ナイト・ライツ(1963ヴァージョン)
2. カーニヴァルの朝
3. ウィー・スモール・アワーズ
4. プレリュード:ホ短調
5. フェスティヴァル・マイナー
6. テル・ミー・ホエン
7. ナイト・ライツ(1965ヴァージョン)
(TechinsightJapan編集部 真田裕一)