(ジャンル:ジャズ)
いわゆるジャズ名盤の中には、「歴史的名盤」と呼ばれるもののほかに、「日本人に愛された名盤」というジャンルがある。
つまり歴史的意義とか革新性とかいうものは一切無いけれども、日本独特のジャズ喫茶文化の中で愛されてきた名盤である。その代表格ともいうべきアルバムが、レイ・ブライアントの1957年作品「レイ・ブライアント・トリオ」である。
日本人に愛されるジャズの条件として、マイナーチューン(短調)の曲が多く収録されているということが挙げられる。
1980年代以降は、日本のレコード会社が外国人ジャズミュージシャンに企画を持ちかけ演奏してもらった、いわゆる「日本企画」のアルバムが多くリリースされるようになったが、やはり基本はマイナーチューンが入っていることだ。
しかし、この「レイ・ブライアント・トリオ」には、当然アメリカ企画のアルバムでありながら、日本人の好むところの「珠玉の」名曲が多数収録されている。
「ゴールデン・イヤリングス」「エンジェル・アイズ」「ジャンゴ」「ザ・スリル・イズ・ゴーン」のマイナーチューン4曲は、ジャズファンのハートをがっちり捕らえて離さない。
しかも、ソロは端正で保守的であるから、安心して聴いていられるという理想のアルバムなのである。
ジャズ入門の1枚としても最適である上に、いわゆるジャズ通の年配の紳士から「好きなアルバムは?」と聞かれて、このアルバムを挙げれば、おおむね好意的に見られるであろう。
惜しむらくは、レイ・ブライアントの代表作と言われる、ラテン調のやはりマイナーチューン「クバノ・チャント」が収録されていないことである。
しかし、今はCDではなくiTunesなどで音楽を聴く時代である。
自分でプレイリストを作って、「レイ・ブライアント・トリオ+1」として、「クバノ・チャント」を加えておけば、もはや彼のほかのアルバムは必要ない「最強名盤」が出来上がることであろう。
(収録曲)
1. ゴールデン・イヤリングス
2. エンジェル・アイズ
3. ブルース・チェンジズ
4. スプリッティン
5. ジャンゴ
6. ザ・スリル・イズ・ゴーン
7. ダフード
8. ソーナー
(TechinsightJapan編集部 真田裕一)