嵐・松本潤、竹内結子主演の月9ドラマ「夏の恋は虹色に輝く」(フジテレビ)。急逝した大スターの父親(伊東四朗)をもつ、売れない二世俳優の大雅(松本潤)が、父の大ファンであったシングルマザーの詩織(竹内結子)に一目惚れ。大雅の所属する芸能事務所で、詩織が働くことになって…というストーリーだ。視聴率は初回は15.7%だったが、2回から6回までの平均は11%程度でかなり苦戦している模様だ。
「夏の恋」というと、“燃え上がるような激しい恋”というイメージがあるが、それからするとこのドラマは極めて地味な印象は否めない。大雅の恋人の条件が「箸を上手に使える女性」であったり、大雅が詩織のためにしてあげたのは、「一番野菜が安いのはどこのスーパーか」を調べることだったり…。詩織に一目惚れして告白しても、翌日にはあっさりあきらめてみたり、「見守ってるだけでいい」と友人に言ってみたり、若い男子の夏の恋とは程遠く、マツジュン演じる大雅は草食系男子そのものである。
大雅と詩織の出会いが、「スカイダイビングをしていた大雅が着陸に失敗し、木にひっかかって降りられなくなったところを詩織に助けてもらう」という、非日常的な意外性のあるものだっただけに、その後の展開は平凡すぎる。詩織の子供の父親が、実は大雅の父親なのか(つまり詩織の子供と大雅は異母兄弟ということになる)というストーリー序盤では、何か意外な展開になる予感もしたのだが、それも子供の父親は他界した別の男性ということがすぐにわかって一件落着してしまった。
またキャスティングにも意外性はあまりない。大雅の兄、大貴役の沢村一樹は、バラエティなどで見せる軽いノリに近い役どころ。世間知らずだがかわいらしい、大貴・大雅兄弟の母親・真知子役の松坂慶子もぴったりだ。詩織の子供・海ちゃん役の小林星蘭も、素直で母親思いで、想像通りとてもかわいらしい。詩織がシングルマザーという設定も、竹内結子もプライベートでは実際にシングルマザーなわけで、これまたドンピシャ。前クール同枠の「月の恋人」には、3年ぶりの連続ドラマ出演だった篠原涼子、映画「レッドクリフ」で人気を博したリン・チーリン、今ノリにのっている北川景子が出演していたことに比べると、話題性も低い。
しかし、このドラマの出来が悪いかというと、決してそうではないだろう。脚本を手がけている大森美香は、「ランチの女王」「不機嫌なジーン」と竹内結子主演の月9を2作品担当しているだけあって、竹内結子の魅力をよく引き出しているように思う。ハラハラ・ドキドキするのが苦手で、安心してストーリー展開を楽しみたい視聴者にとっては、良作といえるのではないか。「水戸黄門」が長く愛されている一因はそういう点にあるからであって、意外性があればいいというものではないわけだ。大雅と大貴の兄弟は、同じ女性・詩織に一目惚れしてしまうが、愛憎のもつれから兄弟同士で殺害しあうなどという展開では困るのだ。もっとも、現在、冠番組をいくつも持っている嵐の松本潤が、売れない俳優を演じているという点で、意外性は充分すぎるということだろうか。俳優として、そして大人の男性としての成長とともに、草食系男子も卒業しそうな大雅に今後期待したい。
(TechinsightJapan編集部 関原りあん)