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(ジャンル:J-POP)
歌謡曲でもフォークでもロックでもニューミュージックでもないJ-POPと呼ばれるジャンルの音楽を開拓したアーティストの中で、特筆すべきなのは、久保田利伸とDREAMS COME TRUEであろう。両者とも歌唱力、楽曲創作能力ともにそれまでのアーティストにはない卓越した才能を持っていたからである。
今回は、2010年久々に新作を発表した久保田利伸の1991年の名盤「KUBOJAH」を取り上げる。
久保田の功績を一言でいえば、どうやったら黒人音楽のセンスを日本のポップにうまく取り入れることができるかという指針を示したことであろう。
それまでにもソウル/ブラックミュージックに取り組んだアーティストは存在したが、歌謡曲の枠組みを出ていなかったり、逆に洋楽のカバーに終始していたものが大半だった。
日本人離れしたビート感を持ちながら洋楽臭くなく、日本的な情感を保ちながら、うまくバランスの取れた日本人の嗜好に合った音楽を創作して歌う才能は素晴らしいの一言に尽きる。
この「KUBOJAH」は、ソウルではなく全編レゲエで固めたアルバムである。
彼ほどの才能なら、ルーツレゲエをそのまま歌うこともできたはずであるが、そういう路線は取らず、「雨音」のような日本的ウェットなメロディで聴かせる曲や、ビル・ウィザースとグローヴァー・ワシントン・ジュニアの演奏でヒットした「Just the Two of Us」のレゲエバージョンなど、洋楽ファンにも邦楽ファンにも楽しめる内容になっている。
彼の傑作はこれだけではないが、レゲエをうまく消化した力作として特筆すべきアルバムである。
なお、昨今のJ-POP業界は、下の名前だけ同じような歌姫を量産デビューさせるよりも、殿堂入り目前の御大に頑張ってもらう方向に向かっているようだ。
そして、「若者は新しい音楽を好む」という伝統はもはや神話化し、昨日出た曲も30年前の曲も同じ次元で聴けるようになっている。
「昔は良かった」式の回顧ではなく、良い音楽はいつの時代も良いという事実を再確認できる、ある意味喜ばしい状況となっている。「KUBOJAH」は、それを実感できる力作である。
(収録曲)
1. キープ・オン・ジャミン
2. 雨音
3. ハニー・B
4. ラブ・ライク・ア・ラストマン
5. 男たちの詩~マイ・ユート
6. テレフォト
7. ジャスト・ザ・ツー・オブ・アス
8. ユー・アー・マイン
9. 神なるものと薔薇の刺
10. 北風と太陽
11. ジャマイカ~この魂のやすらぎ~
(TechinsightJapan編集部 真田裕一)