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(ジャンル:ジャズ)
1969年という年は音楽において、あらゆる意味でのエポックメイキングな出来事そして名盤を輩出した奇跡とも呼ぶべき年である。
ジャズにおいても、それは例外ではない。
特に1960年代後半から目立ってきたさまざまな音楽の融合による曼荼羅的な音世界を作り上げた名盤が2つある。ひとつは、マイルス・デイビスの「ビッチェズ・ブリュー」。もうひとつはジョン・コルトレーンの遺志を継いだファラオ・サンダースの「カーマ」である。
このアルバムは事実上、1曲目の大作「ザ・クリエイター・ハズ・ア・マスタープラン」のために存在する。この曲にはインド音楽、アフリカ音楽、フリージャズなどあらゆる音楽要素が詰め込まれているとともに、マイルスの名盤ビッチェズ・ブリューとの対比において、ポリリズムの壮大な実験であるともいえる。
名義上ファラオ・サンダースの作品であるが、これは紛れもない彼の師匠であるジョン・コルトレーンが存命であれば、ファラオと共に製作したであろう音楽である。
音楽を通して、超越的存在に近づこうとするスピリチュアルな音楽であり、60年代中盤に勃興したフリージャズが、単なる集団即興に陥らず、高度な統制の下で、その成果を発揮している。
まさしく60年代ジャズの偉大な成果であるとともに、ひとつの終わりをも暗示していた。1970年代以降のジャズは、もっと明るくライトなサウンドが志向され、ロックやポップ、ソウルへの傾斜が進んでいき、いわゆるフュージョン全盛の時代になる。
「カーマ」で聴かれるような、重厚長大にしてスピリチュアルな音楽は、1969年という時代のマジックとして孤高の位置にあるといえる。
ファラオ・サンダースは、1990年代にクラブDJによってリスペクトされていたことがあるので、若い世代はそちらで耳にした人も多いだろう。
気宇壮大な音楽を求める人にあまねく聴いてほしい名盤である。
(収録曲)
1. ザ・クリエイター・ハズ・ア・マスター・プラン
2.カラーズ
(TechinsightJapan編集部 真田裕一)