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ジャズ・フュージョンに留まらず1980年代を代表するポップミュージックの名盤である。現在、「歴史」と言えば「過去の出来事や記録」であるが、1980年頃において歴史とは、その時代に生きる人々が一体となって「未来へと進めていく」ものだった。よってこのアルバムをジャズの未来であるとは認めたくない人、認めたいけど周囲の手前上口に出しては言えない人、あっさり認める人たちが熱い議論をしていたのである。
そんな不毛な議論はそろそろやめようじゃないかと宣言するかのようなオシャレなサウンドのアルバムである。
このアルバムに収録されている、Just the two of usは日本では「クリスタルの恋人達」(恥ずかしいタイトルだ)という邦題でヒットしたので、この音を聴くだけで80年代にタイムスリップできる人も多いだろう。
あえてジャンル分けするならば、当時の用語で「ブラックコンテンポラリー寄りのフュージョン」ということになるが、今ではジャズとして広く認知されているとともに、ジャズであると認識しなくてもよい。とにかく気軽に聴けてムード満点なアルバムとして素晴らしいできばえになっている
ちなみに、過去の記録としてのジャズ史を振り返ると、60年代のボサノバやソウル導入、70年代のロックとの融合、そして80年代のブラックコンテンポラリーとの融合を経て、今では、様式美を追求するトラディショナルジャズも、超絶インプロビゼーションを繰り広げる音楽でも、何があってもオーケーということになっている。
よって、今回紹介した「ワインライト」についても、30年前の想い出に浸るもよし、最新のムードミュージックとして聴くのもよしである。
もっとも、現在の20代、30代の若い世代は、そんなことは言われなくても、今の音楽も昔の音楽も関係なく聴いている。
一方で50歳代以上の世代はいまだに「歴史」にこだわっている人が多い。そんなことも考えながら聴くといっそう楽しいであろう。
(TechinsightJapan編集部 真田裕一)