writer : techinsight

【3分でわかる】ギャグマンガ日和

 美少女を描けない漫画家は生き残れないのだという。その話を否定するでも肯定するでもなく、ふと疑問が頭によぎった。そこそこ売れている少年漫画で、美少女が登場しないものはあるのか? 探してみた。そして読んでみた。

 「ギャグマンガ日和」。2000年に月刊少年ジャンプで連載がスタートし、現在はジャンプスクエアにその舞台を移している作品である。ジャンルはその名の通りギャグ。基本的に一話完結のオムニバス形式であり、全体を通しての主人公やヒロインは存在しない。

 10年近くにわたる連載で登場したキャラクターの数は公式キャラブックによると1493。ただしアイテムやモブ、作中作の登場キャラクターも含まれているので、実質は半分程度といったところか。それにしてもけっして少なくはないのだが、美少女は一人もいないと断言しよう。

 作者である増田こうすけ氏の絵柄に癖があるためそう感じるのではない。たとえば幾度か登場する「松尾芭蕉」の弟子「曽良」はイケメンの部類に入るであろうと思われるし、それなりにキャラクターの美醜の描き分けは伝わってくる。そういったことを差し引いても、この作品には美少女は登場しないのだ。

 売れないアイドル「牛山サキ」や「かぐや姫」など女性キャラクターは多数登場するが、彼女らは美少女ではない。漫画における美少女とは、顔だけが整っていればいいというものではないはずだ。私的な結論をいえば、この作品に美少女は必要ないのである。

 ギャグマンガ日和は、純粋なギャグ漫画である。ここ数年増えている美少女ギャグや萌えギャグといった甘っちょろいものではなく、生粋のギャグ漫画だ。そこにはカニとカニ風味カマボコほどの開きがある。チーズとチーズ入りカマボコほどの違いがある。

 歴史上の偉人や昔話。動物たちが暮らす世界に、ロボット、妖精、宇宙人。増田氏の手にかかればどんなものでもギャグ漫画のモチーフとなる。設定や登場人物がまったく違う種類の物語を、あれほど大量にひねり出せることには脱帽する。

 序盤は正直、期待していたほどではなかったと感じたが、読めば読むほどじわじわと効いてくる。昔話や歴史物が多く取り入れられているため、過去に週刊少年ジャンプで連載していた「王様はロバ」を思い起こされるが、ギャグの方向性はまったく別のもの。強いて言うならうすた京介氏の作品に近い。が、よりストレートでわかりやすいギャグがちりばめられている。

 これまた私的な感想だが、漫画の笑いというよりも芸人のコントに近いイメージを抱いた。ツッコミとボケが明確に描かれているため、読者は深読みせずにただ読んで笑えばいいのだ。最近のギャグ漫画はシュールすぎてついていけない、という人にもおすすめできる作品である。
(TechinsightJapan編集部 三浦ヨーコ)