writer : techinsight

【3分でわかる】怨み屋本舗

 2006年に初めてテレビ東京でドラマ化された「怨み屋本舗」。以後数回のスペシャルを経て2009年7月からは新シリーズが放送されている。原作は2000年にビジネスジャンプ増刊エクストラで連載が開始した同名漫画である。

 結婚したばかりの妻を、生まれてくるはずだった小さな命とともに奪われた一人の男。妻を犯し、殺した男に殺意を抱くほど彼の怨みは深かった。しかしながら警察の捜査は一向に進まない。いらだつ男の胸ポケットに、黒い名刺がねじ込まれた。

 “あなたの怨み晴らします”――自らを「怨み屋」と名乗る女の協力を得、犯人は事件の捜査を担当していた刑事だと目星をつけた。あとは怨みを晴らすのみというところまできて慎重すぎるほど慎重に構えている怨み屋に歯噛みし、男は自らの手で刑事を殺害。逮捕と引き換えに怨みを果たしたかに思えたが、妻殺しの犯人は別の人物だったということを知る。男を殺人へ駆り立てた怨み屋の真意とは?

 この作品の主人公は、他人の怨みを晴らすことで高額な報酬を得ている怨み屋、いわゆる復讐代行業者である。毎話、特定の人物に怨みを持つゲストキャラクターが登場し、その怨みをいかに晴らすかが見どころだ。

 この作品は基本的に1話完結となっている。ほぼ1話につき1組のペースで、誰かを殺したい、または社会的に抹殺したいと強く願う依頼者が現れるわけだ。当然その動機が読者に伝わらなければ怨み屋という特殊な存在がまったく生きてこないため、ターゲットの悪事を描く必要がある。スキャンダラスに描かれたそれらのシーンは読者の嫌悪と好奇の的となり、その分余計に怨みを晴らす段においての痛快感が増す。二重に楽しめる構造となっているのだ。

 主人公の怨み屋は年齢不詳のミステリアス美女。非情で計算高く、自らの筋書き通りに物事を運ぶのを得手としている。依頼人に同情心は皆無であるが、時には彼女なりの厚意を見せることも。しかしそれは正義感からではなく、むしろ仕事に正義感は邪魔なものだと公言してはばからない。

 自らの存在を必要悪とし、裏社会で暗躍を続ける怨み屋。加害者擁護の風潮や少年法の甘さ、官僚天国など社会の矛盾点を鋭く突き、法では裁ききれない悪に天誅をくだす。彼女は特殊な能力は持っていない。『暴力は使わず頭脳で殺す』の言葉どおり、人間の心の隙間に入り込み、陥りそうな罠を仕掛け、そこにターゲットを誘うのが怨み屋のやり方である。漫画史上類を見ないダーティーヒロインだ。

 また、美女が主人公だというのになんともいえず枯れた雰囲気も魅力。青年誌のヒロインといえばセックスばかりしているものと思っていたが、怨み屋は浮ついたところがひとつもなく、そこがまた作品のランクを一段上げている。

 コミックスの表紙や扉絵の構図も青年誌とは思えないほど垢抜けており、絵柄は違えどジョジョを思わせるスタイリッシュさがある。作中では依頼人の復讐に燃えた表情に注目。ギャグぎりぎりのバランス感覚がすばらしく、これを見ないと怨み屋を読んだ気がしないほどだ。

 「怨み屋本舗」自体の連載は2007年に終了しているが、すぐさま「怨み屋本舗 巣来間風介」がスタート。そして現在は「怨み屋本舗~REBOOT~」がビジネスジャンプで連載されている。好みはあるだろうが、個人的にはやはり元祖がおすすめだ。ヤングジャンプコミックスで20巻となかなかのボリュームだが、時間を忘れて楽しめることしかるべくである。
(TechinsightJapan編集部 三浦ヨーコ)