ミズーリ州ブルースプリングスにあるSteamin’ Beanには毎日多くの客がコーヒーなどを求めてやってくる。その客の一人がある日「次の客のドリンクをおごる。」と言い出した。その日に何か良い事があったのか、ただそんな気分だったのか理由は定かではない。このささやかな善意が一週間以上も続く“おごりの連鎖”を引き起こすことになった。
ドライブスルーでドリンクをオーダーした女性客が自分のオーダーに加えて次の客のドリンクを支払うと言ってきた。それからと言うもの、すでに支払われたドリンクを受け取り、次の客のドリンクを支払うというサイクルが続き、フリードリンクの輪は今までに1000人以上にまで繋がっていった。オーナーのガーリン ブレッドソーは「今は厳しい時ではあるが、人々は5セントでも1ドルでも自分が出した金が良い事につながるような、そんなことをしたいと考えている。この経済を変えるなんてできないかもしれないが、些細な行為で一日一人の人間を変えられる。」と話している。
中には金に困った人がフリードリンクを利用できるように金を寄付する客もおり、一週間で寄付金は160ドル以上も集まった。この“フリードリンクの輪”は口コミで街中に広がり、店には新しい客が増えたとブレッドソーは言う。住民はローカルのビジネスをサポートするアイディアとしてSteamin’ Beanで始まった現象を高く評価し、他のレストランなどでも同じような運動を始めている。
すべてを始めるキッカケとなった女性客が再びやってきた時、ブレッドソーがまだ続く“フリードリンクの輪”について話すと、涙を流して喜んだという。一人の行動が何百人もの幸せに続いてゆく。不況の中でも一欠片の善意が未来に進む力となるのだ。
(TechinsightJapan編集部 村居唯衣)