警官の格好で、車のスピードを測定するスピードガン(偽物)を持ったかかしが、本物の警官に逮捕された。英国ノーフォーク・ブランカスター(Brancaster)での話である。かかしを置いたのは冗談半分からだったが、逮捕に際しては「不適切なメッセージを与える」というなんともジョークの通じない理由が付された。
このかかしが路傍に置かれたのは、第一にかかしフェスティバルの宣伝のためであり、また、ドライバーに速度を落とさせる狙いもあったようだ。その道路では、自動車がスピードを出しすぎていることが多いのだ。しかしかかしは活躍する間もなく、通りかかった女性警察官のパトカーで連れ去られるはめになった。
一方、フェスティバルの主催者は、交通巡査のかかしを置くことについて、あらかじめ警察の許可をとっていた。主催者側がかかしは盗まれたものと思い込み、騒ぎ立てたのも無理はない。
ノーフォーク警察がかかしの居場所を突き止めるのに3時間を要した。持ち去ったのが身内だとはなかなか思いつかなかったのだろう。かかしは元の路傍に戻されたが、その手にスピードガンは握られていなかった。スピードガンといっても、飲料ボトルに着色して似せただけのものであるのだが。
警官姿のかかしをつくることは許可したが、偽のスピードガンについては認めていない、というのが警察の主張である。
スピードガンは無責任なドライバーを取り締まり、交通事故を防ぐためのものである。冗談でも偽物を路傍に置いて、ドライバーに「不適切なメッセージを与える」ことがあってはならない。そもそも女性警察官がかかしを連行してしまったのも、偽造スピードガンを放置するわけにはいかなかったからだ。と、そういうのだが、警官姿のかかしはよくて、スピードガンはダメという区別はよくわからない。むしろ誤解のもとになるとしたら前者のほうで、警官が持つのでなければスピードガンは、いかなる不適切なメッセージも発しようがないと思われる……。
が、そこで、ほんとうにそうだろうかと疑念が湧いた。警察が、人形に本物のスピードガン(スピードが一定以上である場合には写真に収めるなど自動化されている)を持たせて取り締まることはあり得るのではないか。人間か人形かの見分けは即座についても、スピードガンの真贋は遠目にはわからない。ならばスピードガン(紛い物であれ)を持ったかかしを、警察が設置したものと信じ込むドライバーもいるはずである。ことによると警察の言い分にも一理あるのかしらんと考え直したしだいである。
(TechinsightJapan編集部 田中箇)