writer : techinsight

【3分でわかる】封神演義 後編

 古来、中国で親しまれてきた物語「封神演義」。これをベースとした藤崎竜氏の同名漫画作品は幅広い層から高い評価を得、アニメ、ゲーム、CDブックとさまざまなメディアミックスにより知名度を上げた。結果、“藤崎版”とまで呼ばれるようになったこの作品を封神演義の入門書とした読者も少なくはないだろう。

 主人公は「太公望」。釣り好きを表す言葉として知っている人も多いと思う。語源の詳細はさておき、太公望といえば釣り糸を垂らす老人を想像してしまうが、この作品が連載されていたのは仮にも少年ジャンプである。そんな好々爺を主人公に持ってくるはずがない。

 この作品の太公望は72歳という設定でありながら、見た目は青年のようである。悪巧みやだまし討ちを得手としており、時に味方からも非難されるような卑劣な手を使うことも。飄々とした言動で難問をのらりくらりとかわすことも得意だ。これだけでは少年漫画の主人公たる資格はないが、当然、裏の顔がある。そこに多くの仙人や道士が心惹かれ、太公望と行動を共にするのだ。

 この作品は登場人物のほとんどが仙人または道士であるが、一般的なイメージである髭が床に付きそうなほどの老人は(ごく一部を除いては)いない。みな若々しく魅力的であり、藤崎氏特有のタッチで生き生きと描かれている。特に服装の描写は一見の価値あり。陳腐な言葉で申し訳ないが、オンリーワンの魅力がある。また、個々の能力を具現化した「宝貝(パオペエ)」を使った戦闘シーンは非常にスタイリッシュであり、作品のランクを1つ2つ上げている。

 ストーリーは太公望たちが隠された封神計画の真実に近づく形で進んでいくのだが、随所に細かなギャグがちりばめられており、重苦しさを感じさせない。中盤のバトルにつぐバトル、新キャラにつぐ新キャラも漫画としての終末感に満ちたものではなく、やはりギャグで上手に処理されている。クライマックスの超展開は好みが別れるかもしれないが、ツボにはまれば鳥肌ものだ。

 クライマックスといえば、少年漫画史上おそらくは最凶最悪のヒロインである「妲己(だっき)」の最初で最後の“デレ”は必見。ちなみに、妲己のバックグラウンドはアニメ版とはまったく違うので、こればかりは漫画を読んでみてほしい。そうしてなにもかもをきれいさっぱり洗い流したような最終話は、秀逸の一言である。
(TechinsightJapan編集部 三浦ヨーコ)