writer : techinsight

【3分でわかる】ヘタリア Axis powers

 正直、擬人化とか痛すぎwwwオタクきめぇwww、と思っていた。しかし「ヘタリア Axis powers」を読み終えた今、心の中で土下座をくり返している。

 ヘタリアはニューヨークに暮らす日丸屋秀和氏がウェブ上で公開している漫画作品である。幻冬社により書籍化されたコミックスはすでに50万部発行され、ネットや携帯電話で配信されているアニメは第2期に突入。知る人ぞ知る名作なのだ。

 この作品の主要登場人物は国が擬人化されたもの。コミックスにはこの物語はフィクションでありうんぬんの注釈がつけられているが、キャラクター設定やエピソードは事実に基づいたものとなっている。

 主人公「イタリア」はパスタ大好き、若い女性大好きで腕っぷしはからきしのヘタレである。「ドイツ」は生真面目で軍人然としており、「日本」は和を乱さないことに徹する柔和な性格。そんな3人がこたつに入って日独伊三国同盟を結び、枢軸国が誕生した。

 ここから対立する連合国と血みどろの戦いがくり広げられる……わけではなく、メインはあくまでゆるい日常の断片。歴史上のおもしろエピソードやちょっといい話などが4コマから数ページ単位の漫画で描かれている。ヘタリアはおもしろくもなんともない教育漫画ではない。おもしろく、かつ無駄にためになる作品だ。

 秀逸なのが各国のキャラクター設定。漫画内での行動や発言が、私のような地理歴史音痴から見ても“いかにも”であり、非常にわかりやすいのだ。ヒーロー気取りの「アメリカ」や、純粋さの中に残酷さを見せる「ロシア」、元気だが誰にも相手にされない「シーランド」など、各国の特徴をありありと描き出したキャラクターたちが、ほんわかした雰囲気の中ユーモアたっぷりに動き回る。作品全体がエスニックジョークのようなものだ。

 ヘタリアのアニメ化に際して韓国から抗議があったというが、私の目にはキャラクターの「韓国」はずいぶんと可愛らしく映った。日丸屋氏は特にどこの国に肩入れするわけではなく、おもしろいと思ったものをよりおもしろく伝えようとしているだけであろう。韓国もどうせなら、ヘタリアの起源はわが国にある、くらい気の利いたことを言えばよかったろうに。

 個人的に馬鹿にしていた擬人化だからこそ伝わるなにか。そのなにかがヘタリアにはつまっている。萌える人もいれば燃える人もいるだろうし、勉強になる人だっているだろう。強すぎる愛国心や特定の国への嫌悪感を持っていないならば、誰でも楽しめる作品である。特に地理や歴史に疎い人にこそおすすめたい。これまでなにを見ても聞いても右から左だったのが、少しだけ世界に興味が沸いてくるはずだ。

(TechinsightJapan編集部 三浦ヨーコ)